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イラン中部イスファハンで2024年5月7日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(左)と会談後の共同記者会見の終わりに、報道陣に手を振るイランのエスラミ原子力庁長官=AP
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 6月28日に大統領選挙を行うイランは、ここ数年で着々と核開発を拡大しています。核燃料に使う濃縮ウランは貯蔵量が6トン近く、濃縮度は最高で60%。現状をどう見たらよいのでしょうか。2022年まで外交官を務め、軍縮・核不拡散分野に長年携わった北野充・元ウィーン国際機関代表部大使に聞きました。

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 ――そもそもイランはなぜ、核開発を進めているのでしょうか。

 イランは、原子力活動は平和目的だと主張していますが、民生用としては合理的に説明できないような活動をしています。非常に高い濃縮度までのウラン濃縮がその典型です。どの国も、民生用で濃縮度を60%まで上げて蓄積はしないですよね。

 専門家の間では、イランは「核取得能力」を構築しようとしている、との見方が有力です。核取得能力とは、核兵器を持つと意思決定さえすれば、時をおかずに実現できる能力です。核兵器を製造する能力の取得を目指しつつ、その手前で止める「寸止め」の戦略です。

 核を持とうとする国は、抑止ができるとか、国として威信が高まる、といった利点を見ます。一方で、核を持つと、国連安全保障理事会で制裁を科される、国際社会でいわばまともではないという扱いをされるなど、コストもかかります。寸止めというのは、核を持つ利点は相当程度享受しながら、核を持つコストを抑えるというメリットがあるのだと思います。

トランプ政権の核合意離脱で拡大に転じる

 ――イランの核開発は今、どういう状況ですか。

 米英仏独ロ中の6カ国とイランが15年に結んだ「イラン核合意」と呼ばれる包括的共同行動計画(JCPOA)では、イランに対する制裁を緩和する見返りに、イランの核活動に様々な条件を設けて抑制しました。ウランの濃縮度は3.67%という低いレベルに抑えました。

 仮にイランが核取得の意思決…

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